レーサーであり、起業家でもあったカール・アバルトによって創業されたイタリアのホットハッチカーメーカー「アバルト」。1949年にトリノで誕生した。
今回試乗したのは、フィアット「500(←読み方 チンクエチェント)」をベースにアバルト社がチューンした「595 turismo」。スペックは以下の通り。
・ミッション:ATモード付5速シーケンシャルトランスミッション
・排気量:1400cc直列四気筒ターボ
・最高出力:165ps
・最大トルク:210Nm
・カタログ燃費:12.9km/L
寸法は全長3660mm、全幅1625mm、全高1505mm、ホイールベース2300mmと、非常にコンパクト。軽自動車に匹敵するサイズだ。ハンドルは右。ミッションはAT。
ポップでかわいらしい外観からは想像できない165馬力というハイパワーエンジンに、サソリのエンブレム。そのアンバランスさがイタリアらしい。アバルトマジックとはまさにこのことだ。豊富なカラーラインナップも魅力の一つ。
運転席に乗り込む。第一印象はハンドルと身体の距離が近いということ。普段から小さいサイズのクルマに乗っているとはいえ、天井も狭く窮屈感は否めない。シートはかため。だが、乗っていられないほどかたいのかといえば、そんなことはなく、アクティブなハンドリングでも体が左右に振られることがなさそうな、ほどよいかたさだ。
いざ、エンジンを始動。
いい!
かなり野太いマフラーサウンドが響いてくる。アクセルを踏み込むと軽快にふけあがり、ロードノイズを拾いつつ爽快な走りを楽しめる。ハンドルも思った以上に軽く、でも軽すぎない絶妙な調整がされている。ハンドリングが爽快感を高めるのに一役買っている。
パドルシフトの反応はまずまず。ギアを一段低く落としても、比較的素早くついてくるといった印象だが、多用したいとは思わなかった。
室内の全体的なデザインはシンプルで良い。メーター回りもカッコイイ。
しかし、カーナビは残念。そこだけあとからとって付けたような、浮いてしまっているようなデザイン。カーナビによって統一感は少し失われている。
わかっていることだが、このクルマは小さい。狭い。そこを否定するつもりはない。小さいことによって、かわいらしさを演出できているわけだし、ガレージに置いておいても映えるオシャレなクルマに仕上がっている。
ただ、運転席に座った際、どのような姿勢になっても左足が奥のコンソールボックス付近にあたって、足の置き場がない。左足だけあぐらをかいたような姿勢になれば問題ないが。この点が窮屈さに拍車をかけているように思った。
今回試乗したモデルはATだったため、もしMTに試乗していたら、かなりクラッチ操作に苦戦したかもしれない。
後部座席にしても、トランクにしても容量は壊滅的(←ちょっと言いすぎ)。
仮に、助手席に一人、後部座席にも二人座って、トランクに4人分一泊二日程度の荷物(←たぶん載らない)をぎゅうぎゅうに載せたとする。そしてドライブに出発。
おそらく1時間も耐えられないと思う。特に後部座席。狭い空間の中で、ひざは前席に押し付けられ、身動きがほとんどとれない状況。さらにシートはかため。窓も開けられない。そうなると、数人での長距離ドライブには向いていない。ファミリー層などもってのほか。
一人で乗るには最高の相棒となる。この爽快感を得られるオーナーであれば、“ひとりで”どこまでも走り続けたくなる!そう断言できる一台だった。