「曜変天目茶碗(以下、曜変天目)」とは、中国 宋の建窯で焼かれた不思議な模様の茶碗のこと。初めて知ったのは、2016年末のことだ。某テレビ番組で紹介されて以来、ずっと気になっていた。
「曜変」とは窯変(陶磁器を焼く際の予期せぬ色の変化)を意味し、「天目」とは茶で使用されるすり鉢型の茶碗を意味する。
曜変天目は、天目茶碗の最上級品とされているらしい。
現存する曜変天目は、確認されているだけで世界に3つしか存在しないようだ。中国で焼かれたにもかかわらず、なぜかその3つすべてが日本に残されているという。
【曜変天目が所蔵されている場所】
1.東京 静嘉堂文庫美術館
2.京都 大徳寺龍光院
3.大阪 藤田美術館
曜変天目の定義としては、
1.宋時代の建窯で作られた黒釉茶碗
※黒釉(こくゆう)とは陶磁器などの表面を覆っているガラス質
2.茶碗の内部に釉薬の気泡の破裂痕からなる斑紋がある
3.斑紋の周囲を群青色や紫色など光の角度によって色合いを変える光彩がある
さらに、現在確認されているものは3つしかなく、皇帝や貴族などのお偉いさんが愛用していたという点、中国で作られたのに中国には現存しないこと、さらには、何万個も焼いたうちの1つが偶然の窯変によってできたものであること、どのような名工であっても2つとして同じような模様を再現できない希少性の高さなど、歴史的な価値が評価され3碗すべてが国宝に指定されているという。
2009年には杭州市内の工事現場から70%近い部分が残された曜変天目が出土。さらに、2017年にも同市内で3分の2が残った状態で出土している。
本来、中国で焼かれたものであるため、中国で出土するのは当たり前のことのようだが、完全な状態で残されているのは日本の3碗だけらしい。
なぜ、日本にだけ残されているのかはよくわかっていない。
東京世田谷にある静嘉堂文庫美術館では現在、「日本刀の華 備前刀」を6月2日まで開催している。重要文化財4振、重要美術品11振を含む約30振の歴史的な刀を展示。それら歴史的名刀にくわえて、同館所蔵の国宝「曜変天目(稲葉天目)」が特別に展示される。
訪館した際には追って報告しよう。